飲食店でのロボットによるお食事の「配膳」って、実際どうなの?

人手不足や人件費の高騰、さらにはコロナ禍以降の店舗運営など、課題の多い飲食業界。こうした課題に対するアプローチの1つとして、急速に広がりつつあるのが配膳ロボットです。
配膳ロボットがお料理の配膳を中心にホール業務を担うことで、人手不足の軽減や店舗運営の効率化、さらには接触機会軽減に伴う感染症対策など様々な効果が期待されています。その一方で、従来であれば人が配膳していたものがロボットに代わるため、「お客様が戸惑わないだろうか」などといったお声もよく耳にします。そこで今回は、飲食店での配膳ロボットの稼働って、実際のところどうなの?ということをご紹介したいと思います。
配膳ロボットがお食事を配送する際の懸念点
配膳ロボットによるお料理やお飲み物の提供は、スタッフの業務負荷軽減や人手不足解決の一助となるなどのメリットがある一方で、従来の配膳とは異なることから、いくつかの懸念点が存在するのも正直なところです。まずは配膳ロボットで配膳を行った場合に発生しうる懸念点をご紹介します。
料理の取り間違い
真っ先に上がる懸念事項の1つが料理の取り間違いです。人による配膳ではスタッフとお客様が双方向にコミュニケーションを取りながら料理を提供します。一方でロボットが配膳をする場合は、お客様側のセルフチェックのみ。そのため、人による配膳と比較すると料理の取り間違いなどが発生してしまう懸念があります。
お客様の手で料理を取っていただく必要がある
従来の配膳では、よほど変わったつくりの座席でもない限り、基本的にスタッフの手で料理をテーブルまで提供していました。一方、ロボットによる配膳の場合だと、到着したロボットからお客様自身が料理を受け取る必要があります。この受け取りのひと手間をお客様側にご負担いただく必要があるといった懸念があります。
鉄板料理や類似メニューの配送
ハンバーグやステーキなど、アツアツの鉄板ごとお客様に提供する料理の場合、お客様自身に受け取りをお任せすることで、火傷などの危険性があります。また、ウーロン茶とウーロンハイなどの類似メニューを同一テーブルに同時に配送する場合なども、お客様側での受け取り間違いなどが発生してしまう恐れがあり、このあたりも懸念点として挙げることができるでしょう。
飲食店で実際に配膳ロボットを運用してみると…
ロボットの稼働という観点でみると、通路幅や段差など、その他にも考えなければならない点はいくつかありますが、メイン業務である「配膳」にフォーカスして考えた場合には、ざっと上記で挙げたような懸念点が考えられるでしょう。それではこれらの懸念点に対して、実際にロボットを活用している店舗でのお客様の反応や対応方法などについてご紹介していきます。
受け取り間違いは音声案内+ディスプレイ表示で対応
お客様側のお料理のお受け取り間違いに対しては、ロボット側からの音声案内+頭部のディスプレイへ受け取り棚を表示することで対応しています。
具体的には、ロボットがテーブルへ到着した際の文言として、「お客様のご注文の品は〇段目にあります。ディスプレイをご確認の上、お取り間違いにはお気を付けください。」などといった音声アナウンスの設定が可能なため、お料理のお受け取り間違いを未然に防ぐことが可能です。音声アナウンスの文言は自由自在にカスタマイズできるため、お店の特徴に合わせた内容に設定することができます。
意外とすんなりと馴染む配膳ロボット
実際に飲食店舗で配膳ロボットを稼働させてみて最も驚いたことが、思っている以上にすぐに馴染むという点でした。ロボットを取り扱っている私たちはロボットに馴染みがあるため、ロボットによる配膳に対してもすんなりと対応することができます。一方で一般のお客様の場合、ロボットがお食事を運んでくる様にびっくりするだろうなと思いながら、しばらく店内の様子を伺っていました。
すると、驚いたことにほとんどのお客さんが何食わぬ顔でお料理を受け取っていました。もちろん私たちもできるだけ分かりやすいように座席のPOPを作ったり、音声アナウンスを店舗仕様に変更したりといった対応はしていましたが、それでもほとんど表情を変えずに対応できるものなのかと思わず感心してしまったのを強く覚えています。
もちろんお店によってお客様の属性や年齢層などが異なるため一概には言えませんが、「お料理はスタッフがテーブルまで提供するもの」「お客様自身の手でお料理のお受け取りをさせるなんてあり得ない」などといった考え方もどんどん変わっていくのかもしれません。
店舗オペレーションの一部はロボット仕様に変更する必要がある
より効果的に配膳ロボットをご活用頂くためには、店舗オペレーションを一部ロボットの稼働に合わせた仕様に変更する必要があります。前項で懸念点として挙げたアツアツの鉄板ごとお客様に提供するステーキやハンバーグなどのメニューを100%安心安全に配膳ロボットで提供するのは難しいのが正直なところです。鉄板料理はスタッフが、それ以外のお料理は配膳ロボットが運ぶなどの切り分けが必要です。
また、ウーロン茶とウーロンハイなどの類似メニューの提供の際には、アルコールとソフトドリンクでグラスを変えたり、キッチンプリンターから出てくるオーダーが表示された紙を添えたりするなど、ある程度ロボットの稼働に合わせたオペレーション構築をする必要があります。逆に言うと、ロボットに寄り添ったオペレーションを構築することで、従来の配膳とほとんど変わらない形でのロボットでの配膳が可能になります。
オペレーションを構築して運用頂くことで、配膳ロボットはかなり効果的にご活用頂ける
配膳ロボットを既存のオペレーションにはめ込んでご活用頂く場合には、店舗によってはいくつかの懸念点が発生する可能性はあります。ですが、ロボットの稼働に合わせてオペレーションを構築し運用することで、お客様にはご負担をかけず、かつ配膳ロボット導入によって期待する「人手不足の解消」「人件費の削減」「感染症対策」などの成果を得ることも十分に可能です。この機会にぜひ配膳ロボットをご検討ください。